- 土地活用コラム
核家族化が進み、介護施設への住み替えや同居など様々な理由から、実家が空き家になるケースが増えています。
そのため、下記のような悩みを抱えている人が増えてきました。
「実家を相続したけど、どうすれば良いか分からない。」
「土地や建物を有効活用したい。」
このような悩みを抱えている人の中には、子供の頃の思い出や両親との思い出が詰まった実家をできることならそのまま残しておきたい人もいると思います。
しかし、個人的な感情を優先して然るべき管理や対策をしないまま残しておくと、どんどん老朽化していき、さまざまなトラブルの元凶になりかねません。
最悪の場合、訴訟問題に発展するケースも珍しくないのです。
では、空き家になった場合に、どのようにすれば有効活用することができるのでしょうか?
それは、売却や借地、土地活用といった対策方法を活用することです。
売却や借地、土地活用することで、あなたの希望に合った空き家の有効活用をすることができます。
それにより、トラブルに巻き込まれるリスクが軽減され、将来的にメリットをもたらされるのです。
しかし、売却や借地、土地活用のどの選択肢が最適なのか、選択する事は難しいと思います。
そこで、この記事では、「空き家を抱える危険性」や「土地の活用方法のメリットやデメリット」について解説していきたいと思います。
空き家になった実家の活用方法に困っているあなたは、最後まで読んで、ぜひ参考にしてみてください。
空き家をめぐる深刻な問題
近年、国内では空き家の増加が、社会問題となっています。
年々増加が進み、2018年に発表された総務省統計局の「平成30年・土地統計調査」によると、全国で846万軒の空き家が確認されました。
前回の調査時(平成27年)に発表された統計調査よりも3.6%上昇し、空き家率は13.6%と過去最高を記録しています。
では、何故、空き家は社会問題になる程、問題視されるのでしょうか?
それは、長い期間放置された空き家は、地域や建物周辺に悪影響を及ぼすからです。
詳細に述べると、「雑草が伸び放題の景観」や「老朽化による倒壊・火災発生の防災性の低下」、「犯罪を誘発する防犯性」の問題があります。
そのため、地域住民としては、一刻も早く解決して欲しい重大な問題になっています。
しかし、住宅は所有者の私有財産の為、自治体が勝手に処分する事ができません。
所有者に撤去を求める通告に法的効力がなく、自治体レベルでの解決が困難となり、国としての取り組みが必要な現状です。
空き家を抱えるリスク
実際に、空き家を抱えるとどのようなリスクがあるのでしょうか?
それは、一言でいうと「外部不経済と機会損失」です。
それぞれ説明していきます。
外部不経済とは、所有者以外の地域住民に「経済的損害・不利益」や「地域にもたらす悪い影響」のことです。
例えば、空き家があることにより、治安の悪化や建物の崩壊など、生命を脅かす被害に不安が高まります。
他にも、雑草などにより景観を損ない、ゴミの不法投棄や悪臭によって、他人の生活に迷惑がかかります。
次に、機会損失とは、利用されない空き家があることによって、土地や建物を活用できずに得られるべき利益を得ることが出来ないことです。
自治体は、本来であれば、建物や土地を活用して街の活性化を図りたいと思っています。
しかし、空き家があることによって、新規入居者にとって印象が悪く、まちづくりの妨げになるのです。
このように、活気がなくなった街は、どんどん人口が減少してしまいます。
人がいなくなれば、空き家が増え、街全体の資産価値が低下するリスクが高くなるのです。
実家が空き家になる3つのデメリット
ここでは、実家が空き家になることによって、あなたに及ぼすデメリットについて書いていきます。
デメリットを把握することで、あなたが放置している空き家のリスクに気づくことができるはずです。
最後まで読んで、参考にしてみてください。
劣化が進み、資産価値が落ちる
人が住まなくなった住宅や管理が行き届いてない住宅は、急速に劣化していきます。
どんな建物も劣化しますが、メンテナンスをしている住宅と比較すると一目瞭然です。
なぜなら、人は、無意識のうちに住んでいる住宅をメンテナンスしているからです。
例えば、破損を見つければ、すぐに修理すると思います。
その為、常に程度のいい状態を維持する事ができるのです。
一方、管理されていない空き家の場合、破損を見つける事ができません。
蓄積された破損により、壁や塀が崩れ、屋根の落下を招く危険性すらあります。
このような状態になると、資産価値は一気に下がり、賃貸にする事はほぼ不可能です。
余計な修繕費が必要となり、売却するにしても、建物の状態を悪くしてしまったがために、市場価格よりも安値での取引となってしまいます。
空き家対策特別処置法により税金が高くなる
2015年に、国は増加していく空き家問題の対策をするため、「空き家対策特別処置法」を執行しました。
この法令により、「倒壊などによる保安上の危険性」や「周辺環境に悪影響を及ぼす可能性」があると判断した住宅は「特定空き家」に認定されます。
「特定空き家」に認定されると、行政が、所有者に対して法的効力のある改善を求める指導や勧告、命令の措置を行うことが可能になります。
そして、行政の指導が改善されるまでの期間、固定資産税の税金優遇から除外されるのです。
本来、住宅用地特例が適用された固定資産税は、居住用の住宅に対して税の負担を軽減する特例措置が設けられています。
税金の内訳は、固定資産税と都市計画税に区分され、それぞれ土地や建物の価格から最大1/6と最大1/3の金額が減額されるのです。
つまり、本来1/6軽減されるはずだった税金が、勧告を無視したことにより、最大6倍の税負担を負う必要があります。
当然、使用していない住宅であっても関係ありません。
そのため、将来使用する予定がないのであれば、解体をして更地にし、売却か活用を検討することをオススメします。
ご近所トラブルにより訴訟問題になる場合がある
ここまでの解説でご理解いただいたと思いますが、空き家は、所有者だけの問題ではありません。
近隣住民の生活を脅かし、迷惑を与える要因になります。
実際に、空き家をめぐる近隣トラブルは絶えません。
例えば、ゴミがそのまま放置されていて、いわゆるゴミ屋敷になっている空き家は、不法投棄や悪臭、ネズミやゴキブリなどの害虫が住みつきます。
悪臭は周辺住宅まで臭いを放ち、窓を開ける事もままなりません。
また、ネズミに電気回線をかじられ漏電し、大規模な火災を招くリスクすらあります。
もし、万が一、空き家によって他人に迷惑をかけた場合は、所有者が賠償責任を負わなければいけません。
この損害賠償額は、数千万にも及び、支払う事ができずに自己破産を選択したケースもあります。
このように、空き家は近隣トラブルを引き起こす引き金になりやすく、所有者に不利な状況になるので、早めの対策が必要になります。
売却、借地、土地活用それぞれのメリット・デメリット
それぞれの対処法には、それぞれメリット、デメリットがあります。
主な、活用方法は3つです。
・売却
・借地
・土地を活用する
ここでは、それぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。
最後まで読んで、参考にしてみてください。
売却をした場合
空き家の維持費、固定資産税の納税負担を負いたくない人は、売却することをオススメします。
売却する事で、現金化することができるうえ、税金などの経済面での負担がなくなるからです。
では、売却する事で起こるデメリットはないのでしょうか?
ここでは、売却を選択した場合のメリットとデメリットを詳しく説明していきます。
メリット
売却をした場合の最大のメリットは、まとまったお金が手元に入ることです。
それを元手に、事業や投資、老後資金、子供の教育費に充てることができるので、経済的な余裕ができる点は大きなメリットになります。
また、空き家の維持費や固定資産税の納税も不要になるので、余計な出費をしなくて済みます。
しかし、注意しないといけない点があります。
必ずしも建物に価格が付くとは限らないということです。
建物が綺麗で、かつ資産価値が充分にあるのであれば、高値での売却が可能です。
逆に、状態が悪い空き家の場合、建物に資産価値がつかない可能性があり、非常に安い金額での売却か解体をするしか方法がなくなります。
もし、解体しなくてはいけない場合、買主側の負担で解体することを前提とした「古屋付き土地」として売却することが望ましいです。
しかし、建物付きの場合と比較して、値段は大幅に下がってしまうので、早い段階で売却を検討することをおすすめします。
デメリット
一方、売却した場合のデメリットは、売却時にかかる測量費用や仲介手数料などの諸費用、譲渡所得税が発生することです。
印紙代などを除いたほとんどの諸費用は、売却価格から差し引くことができるので、自己負担額はさほどかかりません。
しかし、売却価格によっては、手元に残る金額がわずかになる可能性があるのを覚えておいてください。
それでは、掛かる費用の中で、1番理解の難しい譲渡所得税だけ説明しておきます。
譲渡所得税とは、不動産の譲渡益(住宅を売って得た利益)に対してかかる税金です。
「購入時の価格から売却時の価格と売却にかかった諸費用を計算」して、納税額が確定し、購入時よりも高い金額で売却すると納税の義務が生じます。
簡単にいうと、購入時よりも高い金額で売却になれば、納税の対象になるということです。
しかし、相続から速やかに売却をした場合、「空き家売却の譲渡所得の特別控除」が適用されます。
譲渡所得税から3000万の控除を受けることができるのです。
節税効果が高い為、ほとんどのケースで、譲渡所得税は必要ありません。
ただし、特別控除を受けるには、「昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された建物」、「相続開始前に、相続人が自宅として居住していた」などいくつかの要件を全て満たしていることが条件になります。
条件を満たした建物を所有しているのであれば、どんどん活用してみてください。
借地にした場合
借地とは、分かりやすく言うと、所有している土地を貸し、毎月土地の使用料をもらうことです。
一般的に地主と呼ばれ、土地の所有権を保持したまま、土地を人に貸す事ができます。
土地を所有したまま、収入を得たい人にオススメの方法です。
それでは、借地にした場合のメリットとデメリットについて解説していきます。
メリット
冒頭でも触れましたが、借地にすると所有者が「地主」となります。
それにより、自分の土地を貸すだけで毎月「地代」や契約更新の際に入る「更新料」などの収入を得ることが可能です。
地代の適正金額は、地域や敷地面積によって異なりますが、固定資産税や都市計画税の2〜3倍ほどが相場といわれています。
稀に、都市部や人気地域の恵まれた立地では、4倍になるケースもあります。
それらの収入が何十年と手元に入るので、経済面での心配がなく、安定した生活を送ることが可能です。
また、更新料は、その時々の地価動向を踏まえて、借主と交渉することが可能です。
つまり、当初よりも地価の価値が上がれば、それに見合った更新料を要求することができるのです。
建物の管理をする必要もなく、何もせずに利益を得られるので、最もリスクの少ない土地活用方法になります。
デメリット
地域や立地によっては、貸し出すことが難しいのが借地のデメリットです。
基本的に、戸建ての住宅であれば、土地の所有権も込みで購入する人がほとんどです。
「借地権付きの土地」は、地主に地代を払うことや増築やリフォーム時に許可を得ることを懸念して、契約する人は滅多にいません。
そのため、借地を借りてくれるのは、ほとんどが企業の商業目的になります。
しかし、企業の商業目的であるがために、立地はとても重要です。
立地によっては、借主が見つからないというパターンもあり得ます。
もし、借主が見つからない場合、固定資産税など土地の維持費を自己負担しなければなりません。
そのため、所有している土地を借地にした場合に、借り手が付くかなどを踏まえて、専門家に相談してから決断するようにしてください。
土地活用した場合
土地活用はさまざまな活用方法があります。
所有している土地の立地、面積などによって活用方法は異なります。
例えば、膨大な面積の土地で、駅やスーパーが近くにある立地が良い場所なら、アパートやマンションを経営することが可能です。
所有している土地に見合う活用方法を見つけて、利用することをオススメします。
ここでは、土地活用した場合のメリットとデメリットについて解説していきます。
メリット
土地を活用することにより、相続税対策や収益化することができます。
相続した土地や建物を上手に活用すると、相続税を大きく軽減することができるのです。
例えば、土地にアパートを建てた場合、賃貸住宅が建つ土地は「貸家建付地(かしやたてつけち)」として、約20%の減額評価がされます。
もし、あなたの所有している土地に1億円の評価がついた場合、賃貸住宅を建設することにより、8000万まで軽減することができるのです。
その他にも、大きな借金を負って建築することで、相続税対象額から借金分を差し引ける制度もあります。
しかし、土地活用する魅力はそれだけではありません。
アパートなどのオーナーになれば、毎月入居者から家賃を得ることができます。
税金対策をしながら収益化もできるのが、最大の魅力です。
デメリット
立地に合う活用方法を選択しないと、膨大な損害を生むリスクがあります。
生活圏内に駅やスーパー、病院や学校などがない場所にアパートやマンションを建設しても入居者は集まりません。
人が集まらなければ、維持費や建設費を賄うことができず、借金だけが膨れ上がる恐れがあるのです。
そういうリスクを避けるためには、所有している土地にあった土地活用をすることが重要になります。
例えば、住宅に向かない土地であれば、太陽光発電や福祉施設にするといった方法です。
リスクを軽減して活用するために、所有している土地に合う活用方法とはどのようなものなのかを良く検討してみてください。
もし、あなた自身で決められない場合は、専門家に相談することをオススメします。
実家の土地を活用する具体例
ここまでの説明で、土地の活用方法をご理解いただけたかと思います。
では、実際にどのように活用すれば良いのでしょうか?
主な3つの活用方法を具体例に詳しく説明していきます。最後まで読んで、参考にしてみてください。
アパートやマンション
アパートやマンションは、全国で法律上の建設可能地域が多く、場所を選ばずに適応することができるので、土地活用の王道といわれています。
経営することにより、毎月家賃収入が入ってくるので、安定した不労所得を得ることが可能です。
税金面でも、相続税軽減の他に、更地に課せられる固定資産税が1/6、都市計画税が1/3まで軽減されます。このように、収入面で見ても、税金面で見ても、賃貸住宅を所有することは非常にメリットが高いのです。
ちなみに、金融機関には、「アパートローン」という定型商品が用意されていて、建設費の融資を受けることが可能です。
借入時に「団体信用生命保険」に加入すれば、万が一、債務者が亡くなった場合、相続人にローンの残債を負わせる心配がなく、安心してアパートを相続させることができます。
駐車場
駐車場は、土地を車が駐車できるように整備し、利用者へ貸し出す方法です。
賃貸住宅と比較すると、初期費用が少なく、活用開始期間も短く住むのがメリットです
月極駐車場とコインパーキングの2種類の方法があり、月極駐車場は、毎月一定の料金を契約者に支払ってもらう形式です。
一方、コインパーキングは、精算機など必要な設備を設置して、不特定多数の利用者から収入を得る形式になります。
コインパーキングは、一般的には、コインパーキング業者が一括で借り上げる形が1番多いです。
この場合だと、基本的に専門会社に委託して運営や管理を任せるので、地主であるあなたは、特に何もする必要がありません。
福祉施設
福祉施設とは、老人ホームやデイサービスなどの介護施設や幼稚園や保育園などの保育施設のことを指します。
行政や事業者と連携して、施設開設を行ない、一括借上方式で貸し出せば、あなたは建物の建設をするだけで収入を得ることが可能です。
また、近年は、少子高齢化や待機児童増加に伴い、福祉施設が不足しています。
そのため、「サービス付き高齢者向け住宅」や「地区町村から認可を得た保育施設など」の建設には、国や自治体の助成金や補助金を受けられる事も多いです。
しかし、福祉施設を建築するメリットはそれだけではありません。
福祉施設として土地を活用することで、日頃お世話になっている地域に貢献することができます。
そのため、収入だけでなく、地域に恩返しをしたいと思っている方にオススメの活用方法です。
まとめ:空き家になった実家の土地は放置せずに活用方法を考えよう
空き家を抱えるリスクについて解説しましたが、如何でしたでしょうか?
思い出が詰まった建物や土地をそのままにしておくことで、大変なリスクを負うことをご理解いただけたと思います。
万が一、空き家によって他人に危害を与えると、所有者であるあなた自身が、膨大な損害額を支払わなければいけません。
そのような最悪な事態を避けるためにも、一刻も早く空き家の活用を検討してみてください。
どの選択肢が良いのか悩んだ時は、この記事を参考にしてみてください。
それでも選択できない場合は、専門家に相談をして、一緒に有効な方法を見つけてもらうことをオススメします。